合気道について


合気道の歴史

合気道とは、植芝盛平開祖  (1883~1969) が創始された比較的新しい武道です。

 

植芝盛平開祖は、日本国内に昔から伝わっていた様々な武術の修行に心身を打ち込んでいらっしゃいました。その後、学んだ武術の奥義を次々と極めていき、さらに精神的な修行にも精進されました。

 

植芝盛平開祖はそのように道を求め続ける中であらゆる苦行を経験されることになり、数々の苦行を乗り越えた末、大正時代にとうとう時代や流派を超えた新鮮さと主張をもった合気道という武道を生み出されたのです。

 

第二次世界大戦以後は、植芝盛平開祖は茨城県の岩間の里において修行をさらに重ね、心技ともにさらなる飛躍を遂げ、入神(技能が人間業とは思えないほど優れている状態)の域にまで到達されたのです。その後も87歳という年齢で生涯を終えるまで、道の研鑽、そして門弟の指導に余念はありませんでした。


合気道の目的

植芝盛平開祖は、合気道について、

 

「合気とは敵と闘い敵を破る術ではない。 世界を和合させ人類を一家たらしめる道である。 即ち、合気道の極意は、おのれを宇宙の動きと調和させ、おのれを宇宙そのものと一致させることにある。 修行者は、このことを日常の鍛錬を通じて 悟るべきである。」

 

とおっしゃっています。簡単にまとめさせていただくと、合気道は敵を打ち破るための武道ではなく、あらゆる人々と調和して、手と手を取り合って一体となるような、和合を目的とした武道だ、ということになります。 植芝盛平開祖は常にこの和の心こそが合気道の真髄であると説いておられました。


合気道の特色

「合気道」と聞くと某漫画で扱われているような「気」を飛ばして戦う「非科学的な」武道なのかな、と思われている風潮が少しありますが、実際はそんなことはありません。(笑)

 

合気道の動きは人間の身体の特徴を科学的に捉えた非常に合理的な動きが基本となっています。この特色があるからこそ、女性でも子どもたちでも合気道に励むことは可能ですし、実際合気道に励んでおられる女性や子どもたちは非常に多いです。むしろ女性・子どもたちに学んでいただきたい武道です。

 

合気道の動きは、入身転換、そして円転の理を基軸としたものとなっています。これらの技術によって、大きな力を使わず合理的に相手を制することが可能となっています。

 

入身とは、攻撃してくる相手の中心に自分の身を入れたり、相手の死角に自分の身を入れたりして、体捌きを行う技術のことです。入身による体捌きでは、相手をむやみに攻撃することなく相手との和合を図ることが可能となります。

 

転換とは、入身によって攻撃を加えることなく和合を達成した相手を、円の動きを用いて相手の姿勢を大きな力を使わず合理的に崩す体捌きの技術のことです。

 

転換で見られるように、合気道には円を基軸とした動きが様々な箇所に見受けられます。合気道は、地球の公転に見られるような、宇宙で一般的な法則である「円転の理」を最大限に活かした武道であると言えるでしょう。これゆえに、合気道は宇宙にみられる法則などを取り入れた、自然の理法にかなった武道であると理解されているのです。実際、立ち回りを見てみても。円の動きが取り入れられていることで、無駄な力を使わずに相手を制することが容易になっていることに気づきます。

 

さらに、精神面においても合気道は理想的な武道であると言えます。合気道は気力や気迫が満ち、それでいて無駄のない動作を目指すので、心身鍛錬に非常に優れています合気道に励んでいる方々に凛とした立ち振る舞いをする方が多いのはこの特色からでしょうか。


合気道が愛されている理由

現在、本部道場をはじめ、国内外を問わず、各地の道場で、学生や壮年者は言うまでもなく、子どもたちや婦人、老人たちのような非常に広い年齢層に渡って愛好者がどんどん増えています。これには合気道が”武道の真髄なり”  ”護身術なり”  ”武術にして舞なり”  あるいは、”万人の健康法なり”  などと言われることが関連しているのではないでしょうか。

  

武道の真髄を捉えるために合気道の稽古に励むも、護身術としての合気道を学び、生活を平穏に過ごす糧とするのも、魅せる武道として皆の息を呑ませる素晴らしい演武を目指すのも、身体の調子を高める健康法として合気道の稽古に励むのも、すべてが合気道に励む理由として素晴らしい理由です。合気道は日本独特の心身鍛練の道として、人間育成の一端として、他にも、様々な目的を叶えることができるので、様々な人に愛好されていますし、様々な人が合気道を学ぶことを推奨しているのです。


護身術としての合気道

「合気道をやってます」などと自己紹介すると、「気を飛ばしたりできるの?」というちんぷんかんぷんな質問を受けることがありますが、それとは別に「合気道って護身術だった?」と聞かれることも多いです。ここからわかるように、合気道は護身術としての側面が広く認知されているとも言えるでしょう。

 

合気道は自分から相手に対して攻撃していくのではなく、攻撃してきた相手の力を上手く利用して相手を制することが基本となっている武道です。だから比較的非力な女性や子どもたちでも自身の身を守るために学べる護身術としての要素が強いです。

 

掴んできた相手をうまく捌いたり、殴りかかってきた相手の拳を避けたり、捌いたり、短刀を持って自分の懐に入ってきた相手を捌いたりする合気道の動きは、護身の役に立つことは間違い無いでしょう。

 

他にも、受身に慣れていると日常生活で転んだ時にも軽傷で済むなど、身近な護身も可能だったりします。


試合のない武道としての合気道

合気道には他の武道に見られるような「試合」というものは存在しません。主に型の反復を稽古として行うことで心身の鍛錬を行っていきます。「型」といっても形骸化した型を学ぶのでは、実際には役立ちません。なので、活きた型を実践できる形で学んでいく稽古が主な稽古内容となっています。

  

型稽古ばかりやっていても「相手がこうしてきたらこうすればよい」ということしか学べないのではないか、と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、それは違います。技の反復を数多くこなし、その型について思考を深めていくことよって合気道の真髄・根幹の部分を体得していくことが可能です。合気道の真髄に近づけば近づくほど、型から離れた相手の動きに対しても対応できるようになっていきます

  

一般のスポーツは試合の勝敗を結果として求めます。これは相対的な結果を求めていると言えるでしょう。その一方で、合気道では絶対的な結果を求めていきます。しかし、言うまでもなく、合気道が戦意をもった相手を相手を傷つけずに制する道、そして超越的な強さを求める道であることは忘れてはなりません。

 

和の精神を持ち、ともに稽古に励む同士たちと1つの技を作り上げ、ともに正しさを求め合い、その正しさを伴った強さを習得していくことが合気道の稽古で求められるのです。

 

 

*これらの内容は、合気道講習会用テキストを参考にして構成しました。